ここは貿易都市バクーバ

他国との貿易船が行きかうこの都市では、他にはない珍しい品が手に入るとあって

それを求める冒険者達が多く集う。マーシュ達もまた例外ではない。

「さすがバクーバだ。いつ来ても人がいっぱいいやがる」

「ほンとにな・・・腐るほどに・・」

エメットとモーニはそんな事をぼやき、荷物を肩に担ぎながら歩いている。

「・・・次は何処に行くの?マッケンロー」

少しだけ荷物を抱えているカロリーヌが、メモを見つつマッケンローに尋ねる。

「そうですね、とりあえず宿屋に荷物を預けてから、パブに行きましょう」

「せっかくだからマーシュも何か見てくるといいクポー」

突然モンブランがそう促すと、マーシュは少し考える仕草をし

「・・・うん。そうだね。じゃあ、お言葉に甘えてちょっと見てくるよ」

マーシュは踵を返し、中央街へと歩を進めて行った。

「モグ達はパブにいるクポよー!」

聞こえているだろうかと思いつつも、モンブランは事を伝えた。

眼を見張るような品物の数々

行きかう人々から発せられる様々な言葉

色々な物にひきつけられながらも

マーシュはそこを歩いていた。

ー何処に行こうか?ー

そんな事を考えながら、横切る人ごみの中に見知った者を見つけた。反射的にその名を呼ぶ。

「リッツ!!」

振り向くと同時になびくピンクの長い髪。まぎれもなく彼の友人リッツ・マルールである。

「マーシュ!?」

驚きながらも彼だという事に気づく。

「久しぶりだね。リッツ」

少し困惑しつつもリッツは

「ど、どうしてマーシュがここに?」

「少し用があってね」

「そう・・・」

「リッツはどうして?」

「まぁ、似たようなものね」

「あのさリッツ。今時間ある?」

リッツは少し考えて

「んー、とりあえずはないわね」

「じゃあさ、僕と一緒に街をまわらない?」

「そうね。別にいいわよ」

「じゃあ、決まりだね」

スッと手を差し出すマーシュ

「えっ?」

「ほら、早く」

「ど、どうして手を出すのよ!」

「だって、この人ごみの中を手を繋がずに歩いたら離れ離れになるから」

ぐっと、言葉に詰まって言い返せないリッツは、しばらくすると観念したかのように

「仕方ないわね・・・少し恥ずかしいけど・・・」

「それじゃあ、行こうか」

人ごみの中、二人は離さぬ様手を硬く握り駆け出した。


今二人がいるのは、バザーが開催されている場所。途中で張り紙を見つけここに来たのである。

「さすがに、貿易都市と呼ばれるだけあるわね」

「そうだね、まさかバザーをやっているなんて思ってなかったよ」

ふと、リッツが喋る事をやめる。何かに気をとられたらしく、手を離しそっちへと歩いて行った。

「リッツ?」

マーシュが気づき急いで駆け寄る。

「どうしたの?」

「綺麗・・・」

眼の前には数え切れないほどの装飾品。宝石の煌きが眩しく見える。

そして隣にいるリッツの視線の先には、ひときわ煌く淡いピンク色の宝石をあしらった首飾り。

「お嬢ちゃんいいのに気が付いたね」

この露店の主人であろう、白髪の長い髭を蓄えた老人が

「それはな、宝石の部分がでマテリア晶石、鎖の部分がミシディア合金とクルセイド合金を合わせて創られた、世界に二つとない代物なんだよ。」

途端にリッツの顔が少し曇る。

「そうなんですか・・・・じゃ、行きましょマーシュ」

「えっ?」

そう言うが否や、立ち上がって足早にそこを離れて行く。

その行動を疑問に思いつつもマーシュは近寄り

「いらないの?」

リッツはふいに立ち止まって、名残惜しそうに呟く。

「・・・欲しいけど。でも・・」

頭の良いリッツの事だ。売ってくれる物ではないと察知したのである。

それを悟ったマーシュは少し考えてから

「さっきのとこに行ってくる!!」

「ちょ、ちょっとマーシュ!」

リッツは止めようとしたが、手は空を切っただけだった。

「すみません!」

息を切らしているマーシュに少し驚きつつも、老人は

「おや、さっきの坊主じゃないか。どうしたんだい?」

「あ、あのさっきのを・・・売ってくれませんか?」

すると、老人は笑みを浮かべ

「・・・本当は売るつもりはなかったのじゃが、あのお嬢ちゃんにあげるのだろう?」

戸惑いながらもマーシュは

「え?あ、はい・・」

「じゃあ、しょうがない。但し売りはせん。・・・坊主にくれてやる・・」

首飾りを差し出す老人。遠慮がちにマーシュは

「いいの・・・ですか?」

「ああ、持ってけ」

「あ、ありがとうございます!」

首飾りを老人から受け取り、マーシュは来た道を急いで戻って行った。

「ほっほっほ。いいのぅ」

老人はそう呟き、人ごみに消えていくマーシュを見とどけた。

「リッツ!」

呼び名に答える者はいない。不安になりつつもマーシュは辺りを探す。

−見つけた−

そこは噴水がある街の広場。リッツは自分を待っているようだ。

ふいにマーシュは閃き、気づかれぬよう彼女の後へとまわった。そして先ほど老人から貰った首飾りをそっと首にかけてやる。

すると、思ったとおりの驚いた顔でリッツは振り向いた。

「マ、マーシュ!?」

「驚いた?リッツ」

「そ、そりゃあ驚くわよ!でも、これ・・・」

首にかけられた、煌く首飾り。それはまぎれもなく彼女が欲していた物。

「あげるよ」

「え!?」

「いいから」

するとリッツは、突然の事で戸惑いつつ一息ついてから華やかな笑顔を浮べた。

「ありがとう!マーシュ!!」

思わずマーシュは見とれた。

リッツは動かないマーシュに顔を近づけると

「どうしたの?」

気が付いたマーシュは、顔を赤らめながら

「な、なんでもない!そ、そうだ!早く戻らなくちゃ!リッツは何処に戻るの?」

「私は・・・パブに・・・」

「じゃ、行こっか!」

マーシュはリッツの手をとってパブへと走り出した。なるべくリッツに顔をあわせないようにして。

−なんでだろう・・・顔が合わせられない・・・−



その夜・・・

「あれ?リッツそれどうしたの?」

シャアラが首飾りを指差す。

「秘密」

少し笑ってリッツはベッドへと身を預けた。

首飾りを大事につけたまま・・・




ほのぼのにしようと思ったら何か変になってしまった代物。あえてネックレスではなく首飾りのしたかは自分でも謎。

てゆーか、ゲーム中でもありえない合金使用の変な首飾り・・・いったい何処からそんな考えが・・・

製作日H17.2.11

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